ＭＫ本社５階。この階は眠らない。彼はここで何年も昼夜問わず働いている。いや、食べている。日々大量の紙を食べる彼の名前は、シュレッダー。 変わらないように見える風景だが、ここにはおもしろい人間がたくさんいる。中でも彼が驚いたのは、昨年新しくやってきた女の子だ。彼女は約１ヶ月ごとに大量のえさをもってやってくる。彼女は時に鼻歌まじりに、また時には怪しい笑みを浮かべながら、彼に話しかける。「今日もよう食べてくれるね」彼にエサをやりながら彼女は満足気だ。彼女が特に喜ぶのは、彼が洗濯機のような轟音をたてながらむさぼり食べる様を見ることのようだ。多くの人間が無表情で彼にエサをやるなか彼女はどこか違っている。 そうこう言っている間に今日もまた彼女がたくさんエサをもってやってきた。今日はなんだか様子が変だ。彼女は彼にエサをやりながら何やら話しかけている。「いつもがんばってくれとるね。ありがとう。」彼女は今にも泣きそうだが必死にこらえているようだ。何があったかわからないが、彼のコンスタントな働きぶり（食べっぷり）に彼女は元気をもらっているらしい。彼は彼女を励まそうとしてか、はたまた、紙を食べるだけでない仕事のやり甲斐を感じているのか、いつもより調子よく働いているように見える。 彼女だけでなく、ここで働くすべての人に感謝されるような仕事がしたいと彼は密かに思っている。なかなかその頑張りが認められず、雑に扱われ、できて当たり前と思われ、不調なときはため息をつかれ、なかなか排泄物（紙クズ）を処理してもらえない時もある。しかし彼はいつも皆を見守っている。彼女はそんな彼のことを好きなようだ。 そして彼女はすっきりしたのか、彼に最高の笑顔を向け「がんばってくるね」といつものように元気に仕事に戻っていった。

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