私が卒業した東海女子高校と東海女子短大が浄土宗系の学校だったのが知恩院とのご縁です。成人式のときに知恩院を訪れましたが、それ以来の訪問です 学校では宗教の授業もありました。南無阿弥陀仏と10回唱えれば幸せになれると素直な気持ちで聞いていました

のちに恩師となる山田満知子コーチのフィギュアスケート教室が近くのスケート場でやっていたことがはじまりです。 家族でスケートをしに遊びにいきフィギュアスケート教室横で見よう見まねで遊んでいました。それを見た山田コーチがこの子は才能があると見出されました 始めたころは、とにかく自分でくるくると回ることが楽しかったです 10歳くらいから全国大会にも出るようになり、素直に新幹線に乗ってあちこち行けるのが楽しかったんです

天才スケート少女として有名になってくると、それまで大好きだったスケートが、やらなければならないものに変わってしまいました 毎日朝は6時から8時、夜は17時から20時や22時まで練習漬けでした 練習のために通う時間ももったいないため、山田コーチの自宅に住み込んで通ってました。スケートを離れると、山田コーチには娘同然にかわいがってもらいました 山田コーチの指導はとても厳しく、いつも辞めたいと思っていました 100点を出してもらえることはなく、いつも不足な点を指摘されていました 練習で「10回飛んで12回成功するくらいでないと本番では成功しない」、と無茶苦茶なことまでまで言われました 練習はつらかいものでしたが、学校生活はとても楽しい充実したものでした

初めてのオリンピックだったカルガリー五輪は、とても楽しいものでした 5種類の三回転ジャンプを跳び、3万人の観客がスタンディングオベーションをする出来でしたが、順位は5位に終わりました 会心の出来に、演技後にはガッツポーズをして、フィギュア選手らしからぬ振る舞いである、とあとでちょっとしかられた 当時のフィギュアスケートの採点は、今よりも見た目や印象で得点が左右されるものでした。どれだけ難しいジャンプを成功させても、身長がスケート靴を履いて150ｃｍしかない自分には不利なものでした

翌1989年の世界選手権ではアジア人として初めて優勝を遂げ、世界チャンピオンになりました 22歳で迎えた2度目のアルベールビル五輪では、金メダル獲得の期待を一身に受け、1回目と違ってプレッシャーで部屋からもほとんど出られませんでした それまでは本番で何度も成功していたジャンプでも、練習でほとんど失敗というありさまでした 本番前半のオリジナルプログラムでは、ジャンプの難度を落として挑戦しましたが、それでも失敗して4位という結果に終わりました 後半のフリー演技では一度目のトリプルアクセルでは転倒してしまいましたが、後半に再度挑戦して見事成功しました 結果、銀メダルを獲得しました。これは冬季オリンピックでは橋本聖子に次いで2人目のメダル獲得でした

実は今、そのときの銀メダルを持ってきています 今から皆さんのところに回しますので、どうぞ手に持って見てください オリンピックのメダルの実物を持つなんてことはまずないでしょう （記者のところに回ってくる前に終わってしました。残念）

オリンピックで銀メダルを獲得し、現役を引退しました それからは新人発掘プロジェクトに関わり、そこで第1期生だったのが荒川静香です 今ではものすごい人気のフィギュアスケートですが、私がスケートをはじめたころはそれほど人気はない雲の上の競技でした。 私が銀メダルを獲得したことがその後フィギュアスケートが人気競技へと普及していくはじまりでした

私は今も現役選手としてもマスターズにあたる国際アダルト選手権にも出場しています。今でも2.5回転くらいならできます 普段は福岡で一般の人を相手にスケートを教えています。 大人になって始める人も多く、55歳から始めたという人もいます。 フィギュアスケートとは、曲にのって自分を表現する競技です 華麗なジャンプができなくてもじゅうぶん楽しめるスポーツです

講話の最後には聴衆からのリクエストでその場でジャンプを披露するなどサービス精神旺盛な伊藤みどり選手 その昔、アルベールビル五輪ではテレビにかじりついてフィギュアスケートを見たのをよく覚えています