物語と謎で京都案内「女性のためのパワースポット巡り」(5)
さあ河合神社へやって来ました。 ここで、物語を読み、謎を解き、指定された場所にいきましょう!  物語の謎を解きながら観光を同時に楽しむ体験型のまちおこしノベルゲームです。 「謎解き+町めぐり+短編小説」の3つが同時に楽しめます。 さあ、挑戦しクリアしよう!
Update Date : 2017-03-08 00:41:12
Author : ✎ novel


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4. 物語を読み、謎を解こう
小説 3:「姫の家出」著:寒竹泉美
 久中の本家には、雛人形のつくも神が住みついている。つくも神は道具の化身で、雛人形の精といえば聞こえがいいが、要するに妖怪である。しかし、妖怪だろうが幽霊だろうが、彼らがいるから久中屋の人形は生きる。久中屋の人形が売れるのは彼らのおかげだと、主人はいつも考えていた。  ひな人形そっくりの大きさと形の彼らは、普段は家の中を自由気ままにうろうろしている。だが、人形が出来上がると、自分に似た人形にとりついて、風船を膨らませるように口からぷうっと魂を入れる。すると、生き生きとして、思わず話しかけたくなるほど愛らしい人形になる。  このつくも神のことを、久中屋では「おひなたち」と呼んで、大切にしていた。彼らの姿が見えるのは、久中屋で働く従業員や出入りの職人・業者だけである。昔は見えない人間も出入りしていたが、やはり商売がやりにくく、気がつけば、見える人間ばかりが残ったのだった。  今年のひな祭りも無事終わりそうだ、と主人はカレンダーをめくって、ひとりごちた。年が明けて以来、繁忙期の注文の処理に追われていたが、三月になって、あとはひな祭り本番を待つばかり。人形屋の仕事は終わりだ。ようやく一息つけるはずだが、癖で早起きしてしまう。  朝飯のお茶漬けを胃に流しこみながら、主人は、ふと庭を見た。寒いと思ったら、雪が降っている。朝の光を反射してきらきらと輝く白い雪の中、おひなの官女たちが舞っていた。ひるがえる赤い袴を眺めながら、食後の茶を飲んでいたそのとき、手伝いの娘が血相変えて部屋に飛びこんできた。 「旦那様、姫が行方不明だと、おひなの殿が言っております」 「なんだと。今すぐ探せ。全員で探せ」  おひなの心の状態は、家庭に行った人形たちにも影響する。何とかして、ひな祭り本番までに連れ戻さなくてはならない。  主人の号令で、人間もおひなたちも、押し合いながら京都の町に飛び出していった。 残った主人は家の中を捜索する。姫の失踪にショックを受けたおひなの殿が、主人の後ろをとぼとぼとついてくる。 「姫の家出に何か心当たりはないか? 姫とケンカでもしたか?」  殿は困惑した表情で首を振るばかり。そうであろう、と主人はため息をつく。こいつはいつも気の強い姫にやりこめられているのだ。家出させられることはあっても逆はない。 「もしかして、ほかの殿方のところに行ってしまわれたのでは?」  主人の肩からひょっこり顔を覗かせた官女が、お歯黒の歯を見せて、にやりと笑った。殿は声にならない悲鳴を上げた。 「こら、いじめるな」  主人は官女を叱る。このままでは殿まで家出しかねない。  何の音沙汰もなく、時間だけがじりじりと過ぎていく。昼の時間を回ってようやく、おひなの仕丁(しちょう)が、情報を得て戻ってきた。妖怪仲間の八咫烏(やたがらす)が、河合神社で姫を見たらしい。河合神社は下鴨神社の敷地にある神社だ。糺の森の中にある。 「なぜ、そんなところにいるんだ?」 「拙者にも分からぬ」  仕丁がうなった。 「河合神社ですか」  声に振り返ると、そこには人形の顔を描く頭師(かしらし)が、立っていた。 「何か知ってるのか?」  頭師は沈痛な顔で、ため息をついた。 「そこは美人祈願の神社です」 ■□■  頭師と殿と一緒に、主人はタクシーで下鴨神社に急いだ。仕丁の仕入れた情報通り、姫は確かに河合神社で見つかった。 「お願いだから、家に帰ってくれ」  主人は、絵馬かけの上の姫を見上げて懇願した。ぶらぶらしている姫の足下には、たくさんの絵馬が揺れている。ほかの神社とは違って、手鏡の形の変わった絵馬だ。絵馬の中に理想の顔の絵を描いて祈願するらしい。たくさんの顔が姫の下で微笑んでいる。 「いやじゃ。わらわはここで美人になるのじゃ」 「祈願なんてしなくても、お前はすでに美人じゃないか」 「いやじゃ。もっと別の顔がいい」  主人は、途方に暮れてため息をつく。ふと心配になって振り返ると、頭師が青ざめて今にも倒れそうになっていた。彼にとって、姫から顔が気に入らないと言われるのは、好いた女に振られたような気持だろう。主人は心から同情した。 「とりあえず、話を聞くから降りてきてくれ」  主人が言うと、姫はしぶしぶ主人の手のひらの上に飛び降りた。 そのまま、ほかの参拝客の邪魔にならない場所に移動する。  どうしたんだといくらきいても、口を結んだままの姫の扱いに困って、主人は、いいか、ようく聞くんだぞ、と自分から話しはじめた。 「顔は人形の命だ。みんなお前さんの顔を見て、買うかどうか決めるんだ。うちはね、本当にたくさんのお客さんが、いいお顔だねと言って買ってくれる。買っていったお客さんも、毎年毎年飾るたんびに、久中で買ってよかったと言いに来てくれる。もし、お前さんが美人じゃなかったら、こんなことはあり得ないだろう?」  おひなの殿も、意を決したように姫の側に歩み寄る。 「余も、おぬしは美人じゃと思う。その顔が好きじゃ。変わってほしゅうない」  姫は驚いたように殿を見て、それからわっと泣き始めた。殿は、動揺しておろおろと姫の周りを飛び回る。次の手は考えていないようだった。 「いったい、どうしたんだ。何があったんだ?」  主人がきくと、 「童子に顔を笑われたのじゃ」  と、姫がしゃくりあげながら答えた。 「なんだと? どこの子供だ」 「西陣の織屋の、まみちゃんじゃ」  主人は頭師と顔を見合わせた。西陣の織屋のまみちゃんというのは、久中と取引のある紺野屋の孫のことだ。昨日もうちに遊びにきていた。人形好きの優しい子だ。顔を笑うなんて考えられない。 「俺、ちょっと紺野屋に行ってきます」  頭師は、そう言って駆け出すと、あっという間に見えなくなった。  半時後、主人の携帯電話が鳴った。紺野屋からだった。 「すまなかったね。うちの孫が原因で大騒ぎさせたみたいで」  久中の人形の着物を卸している紺野屋は、当然、おひなのことを知っている。話が早い。 「今うちにな、お前さんとこの五人囃子(ばやし)が遊びにきてる。朝からずっと、孫と大騒ぎしとるわ」  言われて初めて、主人は昨夜から五人囃子の姿を見ていないことに気がついた。 「やつら、蹴鞠で遊ぶのはいいんだが、鞠を落とした者の顔に墨で落書きして笑い転げるから、うるさくてかなわん。孫も一緒になって、変な顔、変な顔と笑っていたから、それが姫さんの耳に入って、勘違いしたのだろう」  電話の向こうから、にぎやかなおひなの声が聞こえてくる。笛や太鼓の音も鳴っている。紺野屋がため息をついて、まみに代わる、と、言った。 「お姫さん、ごめんね」  舌っ足らずのまみの「おひめさん」は、おしめしゃん、に聞こえる。 「まみ、お姫さんのお顔、だーい好き。大きくなったらお姫さんみたいな美人になるんだ」  再び電話を代わった紺野屋が言った。 「とにかく、早く、こいつらを引き取ってくれ」 「分かった。すぐに何とかする」  主人は電話を切ると、家の者に連絡して、五人囃子の好物、金平糖をひな壇にたっぷり供えるよう、指示をした。これで、やつらは家に帰ってくるだろう。  主人の手の上では、泣き止んだ姫が、真っ赤な顔でむくれていた。怒っているわけではない。まみの言葉に照れているのだ。 「さ、帰るか」  主人が言うと、姫は殿の袖をしっかり握って、一緒に牛車に入っていった。殿の言葉もちゃんと効いていたらしい。  柔らかな日差しを感じて、主人は空を振り仰いだ。朝の雪はどこへ行ったのか、澄んだ青い空が広がっている。 木々の芽も膨らみかけて、もう春がそこまできている。 「せっかく外に出てきたんだ。梅の花でも見に行くか?」  そうしよう、そうしよう、と、いつの間にか集合していたおひなたちが歓声をあげた。 「今日は散歩日和だなあ」  ひとりごとを言いながら歩いていく和服姿の男を、観光客たちは、不思議そうに見送った。〈了〉


問:河合神社に仕える神職の家に生まれ、有名な随筆を残した人物の名前を答えてください。

物語の舞台:河合神社について
河合神社
美人祈願なら下鴨神社の中にある河合神社。『方丈記』の筆者鴨長明は、河合神社の社家(しゃけ)に生まれています。 ご祭神は、玉依姫命(たまよりひめのみこと)(下鴨神社祭神とは同名異神で神武天皇の母をさす)をお祀りしています。 玉依姫命は玉の様に美しい事から美麗の神として、また、縁結び・安産・育児の神として信仰を集めています。 この神社の絵馬はいろいろな表情があってとても華やかで幸せ顔。 願い事を書く絵馬が手鏡の形になっている「鏡絵馬」。 裏には願い事を書き、表には顔の書かれた絵馬に自分の化粧品でメイクをして美しさを願う。 外見的な美しさだけでなく、内面的にも美しい真の日本女性となれます様に、とお祈りするのだそうだ。 「かりん美人水」や「美人飴」を休憩所で販売しています。
情報提供 中井タクシー 090-6601-4845

河合神社へのアクセス
京都市左京区下鴨泉川町59 下鴨神社境内内 【地下鉄(烏丸線)】 京都駅~北大路駅まで 北大路駅より市バス1番・205番(約25分)下鴨神社前(もしくは糺ノ森前) 【市バス】 京都駅~下鴨神社前(もしくは糺ノ森前)まで市バス4番・205番 【JR乗り換え京阪 出町柳駅】 京都駅からの乗り継ぎ→JR奈良線:京都駅~東福寺駅→乗り換え(京阪:出町柳駅行き)→京阪東福寺駅~出町柳駅→徒歩12分 【阪急 河原町駅】より 阪急河原町駅より徒歩5分→京阪祇園四条駅~出町柳駅→徒歩12分
35.03478423093712
135.77192902565002
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35.03478423093712,135.77192902565002,0,0,0
【高画質】京都 河合神社 −女性守護、美麗の神− Kawai Jinjya
京都 河合神社(かわいじんじゃ)- Kawai Jinjya - 京都下鴨神社の境内南に位置する「女性守護、美麗」の摂社です。 2012年に改修され、多くの女性参拝客が訪れるようになりました。 ご祭神は玉依姫命(たまよりひめのみこと/下鴨神社のご祭神「玉依媛命」とは別の神様)。神武天皇の母君で子供の成長を守る女性...

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