タクシーで巻き起こる、数々の物語。 タクシーの仕事は一期一会、毎日たくさんのお客様にご乗車いただいております。 その中で実際にあった「とっておきのエピソード」をドライバーから募集。 応募総数398通から社内審査の結果、優秀作品に選ばれた作品を紹介します。

昨年の夏頃、無線にてご自宅へお迎えにあがりました。家から出てこられたのは、杖をついた80歳ぐらいの婦人でした。 私が「どちらまででしょうか」と尋ねると、婦人は「主人のお墓参りに行くので、よろしく願います」とおっしゃいました。 そして、車を出すと、道中に婦人は私に話しかけてこられました。「主人が亡くなって１年近くになるのですが、この２、３日私の枕元に立って、『生前はありがとう、お前は身体に気をつけて長生きしろよ』と言って消えていくんです」。 「ご主人は亡くなってからも奥様のことを思っていらっしゃるのですね。 本当にいいご主人だったんですね」と私が言うと、婦人は涙を浮かべながら「ありがとうございます。私にとっては本当にいい主人でした」と言っておられました。 そしてお墓に着くと、「少し待っていてくださいますか」と言われたので、私が「よければ一緒に行って、お手伝いしましょうか」と申し出ると、婦人は「ありがとうございます」とおっしゃいました。 無事にお墓参りが終わり、帰る道中、「主人も喜んでいると思います。今回は本当にありがとうございます。 ＭＫさんがいないと、生きていけないんです」と言われて、ご自宅に着きました。 婦人は「今日は本当にありがとうございます。これからもお願いいたします」と言って、頭を深々と下げられて、私が離れるのを手を合わせて見送ってくださいました。 私は、ＭＫのタクシーに乗って、これだけ喜んでもらって本当によかったと思いました。