MK新聞Ｈ24.5.1号より 注：記事は全て掲載時点の情報です。

神戸ＭＫで観光タクシーを始めたのは８年程前です。旅行会社からの依頼でした。「バス旅行の昼食では２班に分かれて時間差を設ける。１班の昼食中に、もう１班の方を近くの観光名所めぐりに案内できないか」。ジャンボハイヤーで車窓から名所を眺める観光を行いました。 私は、このプロジェクトのまとめ役で、ルート計画を立てていましたが、集めた情報をまとめるうち、タクシーでもっときめ細かい観光ができると考えるようになりました。これが観光課を立ち上げたきっかけです。 数名で始めた観光課は毎日が勉強でした。私は、博物館や各施設の無料ガイドを聞きに行ったり、自ら観光バスのツアーに参加したりして、どういう案内をされているかを見聞きしました。団体旅行のあとをつけてバスガイドさんの話に聞き耳を立てたこともあります。その他、観光ガイドブック、郷土史の本などでも勉強しました。そして、それぞれが勉強した内容を随時集まって、報告し合っていました。 ３年程前から本格的な観光課体制を設け、定期的な勉強会を組むことができるまでになりました。観光のご依頼もその頃から大きく増えました。今、10名程が市内観光を任せられるまでになりましたが、より深く市内観光ができるメンバーを増やすとともに、より広く京都・大阪・奈良も案内できるようにと取り組んでいます。

観光課の仲間の体験談なのですが、会社の皆で大切に共有しているエピソードがあります。 全盲のご夫婦が５時間のタクシー観光をされたときのことです。季節は秋でした。満足な観光ができるかドライバーは不安でしたが、「触る、味見する、聞く、嗅ぐ」という体いっぱい使った体験を考えました。最初に、灘の酒蔵を訪ねました。そこには、水田がありましたので、稲にも触ってもらいましたが、驚くことに、ご夫婦は土をも手にし、香りを嗅いで「こんなにもいい香りがするものなのですね！」とおっしゃいました。 ４つの感覚をいっぱいに使う観光は間違っていないと確信し、次は、数種類の食感の違いを楽しめる神戸スイーツを案内。最後は、耳で感じるものをと、六甲オルゴールミュージアムへ…。 お客様には大変喜んでいただけました。ドライバーもあっという間に過ぎた５時間だったと言います。どんなお客様にも、そのお客様に合った観光タクシーを提供できるという励みになるエピソードで、神戸ＭＫの財産になっています。

観光ドライバーに必要なものは「おもてなし」の心で、それは日々のタクシー乗務で身につけるものです。私はお客様の大切な時間をお預かりしているという「一期一会」の気持ちを常に持っています。楽しんでいただくための準備に時間をかけることは惜しみません。 神戸は京都に比べると、確かに文化遺産は少ないでしょう。しかし、せっかく神戸に来られたのだから、京都よりも深い観光ができるように最大限努めています。努力の面では京都ＭＫの方に負けていないつもりです。

ＭＫの観光ドライバーは、観光地への送迎だけではなく、同行しての説明案内や観光プランの提案など、豊富な知識と洗練された接客で多くのお客様よりご好評をいただいております。