京都以外から来た人間にとって、「夷川通」をいきなり「えびすがわどおり」と読める人はよっぽど少ないのではなかろうか。 この通は、平安京の冷泉小路にあたるが、慶長七年(一六〇二)に徳川家康が二条城を築城して以来、通は堀川以東となった。

鳥丸通り東側の角に「家具の夷川」の看板が大きく出ているように、夷川通は家具の街として、その名を轟かしている。しかし、同じ夷川通でも、鳥丸通を挟んで東と西と ではがらりと様相が異なり、家具の夷川通として知られるのは、鳥丸通から寺町通付近までである。この間に和洋家具をはじめ、システムキッチンや、インテリアなどの大小 あわせて、約六十店舗の住まいに関わるお店が軒を連ね、家具の売上では京都府全体の四割を占めるという。 この季節、入学、入社、転勤などで新しく京都での生活を始める人も多いと思うが、今はやりの通販などで好みの家具を選ぶよりも、このわずか数百メートルの小路を歩けば、きっと好みの家具が見つかるはずである。また、引っ越し組でなくとも、この通を歩いてブラインドショッピングをしているだけで、頭の中でいろいろな部屋の模様替えが楽しめてしまう。

対する鳥丸以西の通は、駐車場や児童公園などがあり、家具の通という面影は一気になくなり、静かなたたずまいを見せる。 「えびすがわ」という名は恵比須さんがこの地に流れ着いたという言い伝えからであり、通の東端の鴨川から西端の二条城まで一・八キロと比較的短い通である。